広島高等裁判所 昭和25年(う)189号 判決 1950年6月16日
被告人
北忠
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役五年に処する。
原審に於ける未決勾留日数中五拾日を右本刑に算入する。
原審に於ける訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
弁護人安岡静四郞の控訴趣意第一点について。
原審第一囘公判の際公判廷で弁護人及び被告人から本件一般についてその状況を明白にするため現場の検証を申請したことは原審第一囘公判調書により明らかであつてこの申請に対しその採否を留保の儘何等の決定もすることなくそのまま結審し判決の言渡しをしておることは右第一囘公判調書及びその後の原審公判調書により認められるところであつてこれは明らかに訴訟手続に法令の違反があるものと云うべきであるが然し右検証により立証しようとする本件一般についての状況は原審が取り調べた証人梶谷浅男、同北義輝、同山本清一、同山本キヌ同松浦俊信の各供述及び被告人の原審公判廷に於ける供述によつて明らかになつておるのでこれ等の供述により原審が判決をするに当り右の点は十分考慮されておるのであるから原審の訴訟手続に現場の検証の申請について採否の決定をしなかつた法令の違反があつてもその違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであると云うを得ないので論旨は採用しない。